年末調整の源泉徴収票を見て「なぜこの金額なのか?」と疑問に思ったことはありませんか?
この記事では、給与所得にかかる所得税と住民税の計算方法を詳しく解説し、実際に計算できるツールもご紹介します。
所得税・住民税簡易計算ツール
Web上で利用できる税金計算ツールをご用意しました。
ツールの使い方
源泉徴収票の4つの項目の金額を入力してください。
- 支払金額 = 年収(額面の給与額)
- 所得控除の額の合計額 = 所得控除の額の合計額
- 住宅借入金等特別控除の額 = 住宅ローン控除の額(※該当者のみ)
- ふるさと納税の支払い額
ツールの特徴
- 源泉徴収票ベース:3つの項目の金額を入力するだけの簡易計算機です
- 計算式表示:どのように計算されているかを確認可能
- 給与所得控除額の計算:支払金額(年収)を入力すれば給与所得控除の額も計算可能
- 住宅ローン控除対応:控除額を入力すれば税額に反映されます
- ふるさと納税対応:ふるさと納税の金額を入力すれば、税額に反映されます
2024年源泉徴収票を使って2025年の税金を試算する場合
- 支払金額:2024年を参考に、2025年の見積もり額を入力
- 所得控除額:源泉徴収票の金額から10万円を足して入力
- 住宅ローン控除額:源泉徴収票の金額をそのまま入力
なぜ10万円足すの? 2025年より基礎控除が48万円→58万円に増額されるため、実質的に所得控除が10万円増えるためです。
🧮 所得税・住民税計算ツール 2025年改正対応
💰 年収と控除額を入力
📊 計算結果
⚠️ ご注意
• ふるさと納税はワンストップ特例制度を利用することを前提としています。
• 詳細は税務署や税理士にご相談ください
2025年税制改正のポイント
2025年から税制に変更があり、多くの給与所得者の税負担が軽減されます。
主な変更点(2024年 → 2025年)
項目 | 2024年まで | 2025年から | 変更額 | 備考 |
基礎控除(所得税) | 48万円 | 58万円 | +10万円 | 恒久措置 |
基礎控除(住民税) | 43万円 | 43万円 | 変更なし | – |
給与所得控除(最低額) | 55万円 | 65万円 | +10万円 | 恒久措置 |
特例基礎控除 | なし | 段階的控除 | 最大+47万円 | 2025-2026年限定 |
いつから適用?
- 所得税:2025年分から(2025年12月の年末調整から新制度適用)
- 住民税:2026年度分から(2026年6月~)
- 特例措置:2025年・2026年の2年間限定(2027年からは一律58万円)
計算ツール利用時の注意点
2024年の源泉徴収票を使って2025年の想定税額を試算する場合
- 2024年の所得控除額に10万円を足して入力してください。
- 基礎控除が48万円→58万円に増額されるため、所得控除が10万円増える効果があります。
- 給与所得控除は最低額が上がるだけですので、フルタイムで働かれている方には影響ありません。
例:2024年の源泉徴収票で所得控除が120万円の場合 → 2025年計算では130万円と入力
2025年・2026年限定の特例基礎控除について
年収に応じて基礎控除がさらに上乗せされる特別措置があります。
- 年収が低い方ほど控除額が大きくなる制度。
- 最大で47万円の追加控除。(基礎控除95万円まで)
- この特例により、一部の方は年収160万円まで非課税になります。
- 2025年・2026年の2年間のみの限定措置です。

所得税の計算方法
1. 税額の計算の順序
年収(額面) → 給与所得控除 → 各種所得控除 → 税額の計算 → 税額控除の適用
- まず年収(額面)から「給与所得控除」を差し引きます。
- さらに「基礎控除」「配偶者控除」「扶養控除」「社会保険料控除」などを差し引きます。
- 残った金額が「課税所得金額」となります。
- 「課税所得金額」に「税率」を掛けたものから、「税額控除(住宅ローン)」を差し引きます。
源泉徴収票では、
支払金額 = 年収(額面金額)
給与所得控除後の金額 = 年収 – 給与所得控除額
所得控除の額の合計額 = 給与所得控除、住宅借入金等特別控除の額以外の控除額
2. 給与所得控除の適用
年収(額面の給与額)から、給与所得控除、基礎控除、社会保険料控除、扶養控除などを差し引いたものが課税所得金額となります。
給与所得控除の種類と説明については、次の段落で行います。
3. 累進税率の適用
課税所得金額に対して、以下の累進税率を適用します。
- 195万円以下:税率5%
- 195万円超~330万円以下:税率10% 控除額97,500円
- 330万円超~695万円以下:税率20% 控除額427,500円
- 695万円超~900万円以下:税率23% 控除額636,000円
- 900万円超~1,800万円以下:税率33% 控除額1,536,000円
- 1,800万円超~4,000万円以下:税率40% 控除額2,796,000円
- 4,000万円超:税率45% 控除額4,796,000円
課税所得が300万円の場合、195万円までは5%の税率が適用され、195万円~300万円の部分にのみ、10%の税率が適用されます。全体に10%がかかるわけではないので、税率の境界を気にして給与を調整する必要はありません。
「税率○% 控除額○○万円」と表記されていますが、これは計算を簡単にするためのものです。
計算例:課税所得300万円の場合
- 本来の計算:195万円×5% + 105万円×10% = 9.75万円 + 10.50万円 = 20.25万円
- 簡単な計算:300万円×10% – 9.75万円 = 30万円 – 9.75万円 = 20.25万円
4. 実際の計算例
年収500万円の会社員の場合
- 給与所得控除:144万円(500万円×20%+44万円)
- 基礎控除:58万円 (2025年)
- 社会保険料控除:約70万円
- 課税所得:500万円 – 144万円 – 58万円 – 70万円 = 228万円
- 所得税:228万円×10% – 9.75万円 = 13.05万円
- 税額控除:13.05万円 – 10万円(住宅ローン控除) = 3.05万円
所得控除の種類(給与所得控除、基礎控除等)
所得控除とは、個人の事情に応じて課税所得を減額する制度です。所得控除を適用することで、所得税・住民税の負担を軽減できます。
給与所得控除
給与所得控除は、企業や官公庁等から給与を得ている方が受けられる控除になります。仕事に係る必要経費の計算が難しく煩雑となるサラリーマンのための、定められた基準で給与収入から控除する制度です。
給与所得控除の額は、年収を元に計算されます。年収に応じて以下の計算式によって算出してください。
- 162万5千円以下 → 65万円(一律) ※改正前:55万円。2025年から65万円に変更になりました。
- 162万5千円超〜180万円以下 → 年収 × 40% – 10万円
- 180万円超〜360万円以下 → 年収 × 30% + 8万円
- 360万円超〜660万円以下 → 年収 × 20% + 44万円
- 660万円超〜850万円以下 → 年収 × 10% + 110万円
- 850万円超 → 195万円(上限)
給与所得控除額の計算例
- 年収300万円の場合:300万円 × 30% + 8万円 = 98万円
- 年収500万円の場合:500万円 × 20% + 44万円 = 144万円
- 年収1000万円の場合:195万円(上限適用)
基礎控除
基礎控除は、所得税の納税者全員が受けられる控除になります。最低限の生活費に対しては課税しないという考え方に基づき、一定額を所得から差し引くことで税負担を軽減する制度です。
給与所得控除が「給与を得ている人」に限定されるのに対し、基礎控除は給与所得者、事業所得者、年金受給者など、所得の種類に関係なくすべての納税者が対象となる点が特徴です。
- 2025年以降:合計所得金額に応じて58万円(課税所得132万円以下は95万円)
- 2024年まで:48万円
基礎控除額の2025~2026年の特例処置については、下の記事をご覧ください。

配偶者控除
生計を一にする配偶者がいる場合の控除です。
- 一般:38万円(配偶者の合計所得金額48万円以下)
- 老人:48万円(配偶者が70歳以上)
配偶者特別控除
配偶者の所得が48万円超133万円以下の場合に適用されます。
- 最大38万円(配偶者の所得に応じて段階的に減額)
扶養控除
生計を一にする親族を扶養している場合の控除です。
- 一般:38万円(16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満)
- 特定:63万円(19歳以上23歳未満の子供など)
- 老人:48万円(70歳以上の親など)
- 同居老親:58万円(70歳以上の同居している親など)
社会保険料控除
健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など、社会保険料として支払った金額の全額が控除されます。
生命保険料控除
生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合の控除です。
- 一般生命保険(新制度最大4万円・旧制度最大5万円・新旧合算する場合は最大4万円)
- 介護医療保険(最大4万円)
- 個人年金保険(新制度最大4万円・旧制度最大5万円・新旧合算する場合は最大4万円)
- 上記3つの保険の控除の合計は最大12万円まで
- 2026年から23歳未満扶養親族がいる場合、一般生命保険料控除が最大6万円に拡充
地震保険料控除
地震保険料を支払った場合の控除です。
- 最大5万円(支払った保険料の全額)
医療費控除
年間の医療費が10万円(総所得金額等の5%のいずれか少ない方)を超えた場合の控除です。
- 最大200万円(実際に支払った医療費 – 10万円)
- 控除を受けるためには確定申告が必要
セルフメディケーション税制
健康診断を受けるなど一定の要件を満たし、対象となる市販薬を年間12,000円以上購入した場合の控除です。
- 最大88,000円(購入金額 – 12,000円) ※医療費控除との選択適用
- 控除を受けるためには確定申告が必要
寄附金控除(ふるさと納税など)
国や地方公共団体、認定NPO法人などに寄附をした場合の控除です。
- 寄附金額 – 2,000円(総所得金額等の40%が上限)
- 控除を受けるためには確定申告かワンストップ特例の適用申請が必要
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金の控除です。
- 上限なし(支払った掛金の全額)
その他の控除
- 障害者控除:本人や扶養親族が障害者の場合(27万円または40万円)
- 寡婦控除・ひとり親控除:配偶者と離別・死別した方など(27万円または35万円)
- 勤労学生控除:学生で一定の要件を満たす場合(27万円)
- 雑損控除:災害や盗難により損失を受けた場合
計算例:課税所得400万円の場合
所得税 = 4,000,000円 × 20% - 427,500円 = 372,500円
※100円未満切り捨て
復興特別所得税
東日本大震災の復興財源として、2013年から2037年まで課税されます。
復興特別所得税 = 所得税 × 2.1%
※1円未満切り捨て
住宅ローン控除について
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用してマイホームを購入・新築・増改築した場合に適用される税額控除です。
住宅ローン控除の額が所得税だけで引ききれない場合は、住民税からも控除されます。住民税からの控除には上限があります。
住民税の計算方法
住民税はお住まいの都道府県・市町村に納める税金で、税率は全国ほぼ一律10%です。
基本的には所得税の計算の際に用いた所得控除が適用されますが、一部控除額が異なります。
住民税と所得税の控除額の違い
住民税と所得税の計算では、所得控除額に違いがあります。異なる点は以下の通りです。
1. 基礎控除額
- 所得税:58万円(2025年12月以降、低所得者は最大95万円)
- 住民税:43万円(15万円以上少ない)
※2025年の税制改正により、所得税の基礎控除額は58万円(95万円)に増額されましたが、住民税の基礎控除額は変更されませんでした。
2. 配偶者控除・扶養控除等の人的控除
- 住民税は所得税より各控除額が5万円ずつ少ない
例:配偶者控除 所得税38万円→住民税33万円
3. 生命保険料控除の上限額
- 所得税:最高12万円(新制度)
- 住民税:最高7万円(新制度)
4. 地震保険料控除の上限額
- 所得税:最高5万円
- 住民税:最高2.5万円
これらの違いにより、住民税と所得税では課税対象となる所得の額が異なります。
住民税の基本的な仕組み
住民税は以下の2つで構成されます。
- 所得割:所得に応じて計算(税率10%)
- 均等割:一律5,000円程度(自治体により異なる)
住民税額 = (所得割 - 調整控除)+ 均等割
※所得割は100円未満切り捨て
調整控除と均等割りについて
住民税には「調整控除」という小額の控除があります。これは所得税と住民税の控除額の違いを調整するためのもので、多くの方に2,000円~3,000円程度の控除が適用されます。
「均等割り」とは所得に関係なく一律で課税される部分で、標準的には年額5,000円です。
まとめ
2025年度税制改正により、多くの給与所得者の税負担が軽減されることとなりました。改正の要点をまとめると以下の通りです。
改正のポイント
- 基礎控除の大幅引き上げ:所得税で48万円→58万円~95万円(所得に応じて段階的)
- 給与所得控除の引き上げ:最低保障額55万円→65万円
- 103万円の壁の実質的な解消:課税最低限が160万円まで引き上げ
- 住民税は据え置き:基礎控除43万円のまま変更なし
適用時期の注意点
- 施行は2025年12月1日から:年末調整から新制度適用
- 2025年の大部分(1月~11月)は従来制度のまま
- 住民税は2026年6月から:会社員の場合、2026年6月~2027年5月徴収分
家計への影響
- 低所得者ほど恩恵が大きい:合計所得132万円以下は基礎控除95万円
- 中所得者も減税効果:2025年・2026年は特例措置で追加控除
- 定額減税の終了:2024年の定額減税(1人4万円)は終了のため、一部で実質負担増の可能性
今後の対応
税制改正により控除額が変更されるため、扶養の範囲内で働く方や年末調整・確定申告を行う方は、新しい制度内容を正しく理解し、適切な手続きを行うことが重要です。特に、2025年12月の年末調整では新制度が適用されるため、控除申告書の記載内容に注意が必要です。
この改正により、多くの納税者の税負担が軽減される見込みですが、個々の状況により影響は異なるため、詳細については税務署や税理士にご相談されることをお勧めします。
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