毎年、年末調整や算定基礎届の処理をやっていると、「あれ、これ去年も同じところで詰まったな」と気づくことがあります。
その都度調べて「なるほど」と思ったはずなのに、翌年にはほぼ同じ場所で同じように迷っている。ひとり総務として働いていると、すぐに聞ける同僚もいないので、毎回自分で調べる羽目になります。地味に時間を食われますし、正直けっこう凹みます。
これが老化……か……。
そう考えて諦めそうになりますが、思い返せば20代の頃からこの状況はあったように思います。
「自分の頭が悪いのか、それとも覚え方に問題があるのか」と考えていたところ、たまたま読んだ本で「エビングハウスの忘却曲線」というものに出会いました。そこには、「人間は忘れる生き物なのだ!」ということが力強く書かれていました。
実際にこうは書かれていませんが、わたしにはこう感じられました。
その本を参考にして、なるべく忘れずにいる技術を身に着けるため、いくつか試行してみました。この考え方を実務にどう当てはめてみたか、うまくいったこと・いかなかったことを正直に書いてみます。
エビングハウスの忘却曲線とは、ざっくりどういうものか
エビングハウスの忘却曲線とは、19世紀の心理学者エビングハウスが、自分自身を被験者にして行った記憶の実験がもとになっているそうで、人は学んだ内容の多くを、思っている以上に早いスピードで忘れていく、という傾向をグラフ化したものです。
細かい保持率の数字は研究や条件によって幅があるようなので、興味のある方はご自身でも調べてみて下さい。
この話がわたしに刺さったのは、「1回で覚えられないのは意志が弱いからではなく、そもそも人間の記憶とはそういうものらしい」という点でした。今まで「なんで自分は覚えられないんだろう」「馬鹿なんだろうか」と自分を責めていた部分があったので、少し気持ちが楽になりました。
また、この忘却曲線の研究では、学んだ当日だけでなく、翌日、1週間後、1ヶ月後といったタイミングで復習を重ねることが、記憶の定着には有効とされていました。この復習間隔は情報源によって多少幅があるようですが、「忘れかけた頃にもう一度触れる」という行動の重要さは共通見解のようです。
これを自分の業務や日常生活に当てはめてみようと思いました。
結論から書くと、今のところは「学んだ当日にノートに書き出し、翌日にAIへ質問し、その後はノートを読み返すだけ」という形に落ち着いています。
詳細はここから下に書いています。
試してみたこと1:Ankiに挑戦して、正直挫折した話
まず最初に試したのは、復習タイミングを自動管理してくれるという間隔反復のアプリ『Anki』でした。「暗記用アプリ5選」とかの記事を読むとかなりの確率で出てくるので、どうやら定番アプリのようです。
ただ、これは正直、うまくいきませんでした。
『Anki』は簡単に説明すると、デジタルの単語カードです。
単語カードというのは、学生時代に英単語とかを覚えるためにやった、表に問題、裏に答えを書いた紙をリングでまとめたアレです。
とにかく、問題を登録するのが大変。問題を考えて、入力するという作業は、日々の業務の間に挟むには重すぎます。かといって帰りの電車でスマホで入力するともっと大変だし、家に帰ってとなると、すでに忘れ始めているので、再度調べなおすところから始まるのでものすごく時間がかかる。
家ではなるべく子どもの相手をしたいから、ちょっと無理。
登録してしまえばすごく良いアプリだと思います。まさに忘却曲線に沿って、忘れたころに出題してくれる、というシステムなので、これほど今回の試みに適したものもありません。
でもまあ、無理でした……。
日々増えていき、しかも内容自体が更新されていく実務の知識に対して、いちいち問題を作って繰り返し解く、というやり方は、自分の業務には合っていないのではないかと思いました。
試してみたこと2:ノートに書き出す
現在も続いているのが、寝る前の10分間だけを復習に使う、というやり方です。
その日学んだことをノートに書き出す、というやり方です。
5分間書いて、5分間過去のノートを読みます。
思い出して書くことで記憶の定着を助けますし、思い出せなかった部分が、「まだ理解が甘いところ」として浮かび上がってくるので、翌日にもう一度確認します。
これは性格や慣れの問題だと思うのですが、わたしの場合はアプリを使って暗記問題を作るよりは、ノートに書く方が取り組みやすく、かれこれ半年ほどは続いています。自宅に勉強スペースを用意して、すぐにノートを書き始められる状況を作れたのが勝因だと思っています。
寝る前にパソコンやスマホを使うと睡眠の質が下がると言われているので、書きながらわからない点や調べたい点があっても次の日まで放置です。字の綺麗さなんて気にしない。間違ってても気にしない。
最初は気になりましたが、すぐに慣れました。
加えて、書いたものを読み返す時間も確保しています。
忘却曲線を参考にするなら、1週間後とか1か月後とかを意識した方が良いのでしょうが、管理が面倒なのでかなりおおざっぱです。ざっくり「1週間くらい前かな」というページを読むのと、そのあとはひとつ前のノートをパラパラめくる感じです。
試してみたこと3:ChatGPT・Claudeに「質問させてみる」
もう一つ試したのが、覚えた内容を自分の言葉で説明し直す、いわゆるアクティブリコール(教材を見ずに、自分の力で思い出そうとする復習方法のことです)に近いやり方です。
「記憶を定着させるには、誰かに教えるのがいい」というのはよく聞きますが、ひとり総務では教えを求めてくる後輩なんていません。
その部下や後輩役をAIにやってもらうのです。
やり方は単純で、学んだ後に「〇〇についてわたしに質問して」とAIに語り掛けるだけです。営業の方などが良くやる、「AIロープレ」の手法を、記憶の定着に応用する形です。
プロンプトを工夫した方が質問の質が上がると思います。一度作ってしまえば、ChatGPTやClaudeのプロジェクトにひな形を入れておくだけなので楽ちんです。
このプロジェクトを開始するとき、わたしに【テーマ】を聞いてください。
その後、その【テーマ】について、わたしに質問してください。あなたは新入社員です。専門知識はまったくありません。 あなたは【テーマ】について、「なぜそうなるのか」「もし〇〇の場合はどうなるのか」というような、初心者らしい素朴な質問を1つずつしてください。 一度にたくさん質問せず、わたしの回答を聞いてから次の質問をしてください。 わたしの説明が曖昧だったり、専門用語をそのまま使っていたりした場合は、遠慮なく「それはどういう意味ですか?」と聞き返してください。
知識のない立場からの質問というのは、こちらが当たり前だと思って説明を飛ばしている部分を的確に突いてくることもあって、「すごく基本的なことが抜けてたな」という発見があることもあります。
制度が変わったタイミングや、新しい範囲を勉強したあとに2回ほどこれをやると、けっこう定着した感覚があります。
質問者のキャラクターもいろいろ設定しておくと、遊び感覚で取り組めます。
ある程度質問が終わったら、「わたしの回答を評価して」というと、AIが答え方や答えの正しさについて意見をくれますので、学習効果は結構高いんじゃないかな、と思いながらやっています。
今のところのわたしの結論
いろいろ試してみて感じたのは、「これが正解」という方法があるわけではなく、自分の生活リズムに合うかどうかが一番大事だということでした。ツールで完璧に管理しようとするより、続けられる形に落とし込むほうが、少なくとも今のわたしには合っていたようです。
完璧な形を目指すより、続けられる形を探す方が良いと思っています。
具体的には、法改正の要点や、新しく使い始めたAIツール(ChatGPTやClaude)の使い方をメモした内容について、今のところこんなイメージでスケジュールを組んでいます。
- 学んだ当日:ノートに書き出す
- 翌日:あやふやだった点を復習してから、AIに質問させる
- 1週間後・1ヶ月後:時期は厳密に決めず、過去のノートの記述を繰り返し読む
試験勉強ではないので、すべてを完璧に暗記する必要はありません。そのため、きっちり管理して完璧に記憶するというより、「ゆるく続けて、なるべく多く覚えておこう」くらいの感覚で続けていけばよいと考えています。
まだ試行錯誤の途中なので、この先やり方が変わるかもしれません。同じように「覚えたはずなのに、また忘れている」と感じているひとり総務の方がいれば、何かの参考になればうれしいです。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。
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