■はじめに
年末調整の書類を前にして、「どう書いたらいいんだろう?」「去年はどう書いたっけ?」と不安に感じていませんか。
多くの人にとっては年に一度のことなので、忘れてしまうのも当然です。記憶がリセットされ、毎年「どう書くんだっけ?」と頭を悩ませるのは必然です。
2025年の年末調整では、基礎控除と給与所得控除の引き上げ、そして特定親族特別控除の新設といった大きな変更がありました。
特に注目すべきは、これまでの「103万円の壁」が「123万円の壁」へと変わった点です。この変更により、扶養控除の対象となる人が変わる可能性があるため、今年の年末調整では特に注意が必要なのです。
この記事では、年末調整の際に提出する扶養控除申告書を記入する際に注意すべきポイントを、わかりやすく解説します。
給与所得・扶養控除計算ツール
給与所得を得ている家族が、扶養控除を受けられるかどうかの判定ツールです。
配偶者・大学生世代(19歳以上23歳未満)の子ども、その他の3つの分類で判定できます。
この計算ツールは給与所得を対象にしています。年金所得については計算できません。
💰 給与所得・扶養控除計算ツール
2025年版 – 配偶者・大学生世代対応
※ 源泉徴収前の金額(総支給額)を入力してください
2025年の年末調整、ここが変わった!
「103万円の壁」から「123万円の壁」への変更
「103万円の壁」が「123万円の壁」になりました。ニュースでも大々的に取り上げられましたが、少し前のことなので詳細を忘れている方も多いんじゃないでしょうか。
具体的に何が変わったかを説明します。
これまで、配偶者や子どもの年収(給与収入)が103万円を超えると、扶養控除を受けられなくなっていました。しかし2025年からは、年収(給与収入)が123万円までが扶養控除の対象になりました。
これは、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられたことに加え、基礎控除が48万円から58万円に引き上げられたことも考慮し決定されています。
つまり、パートやアルバイトで働いて給与を貰っているご家族が、これまでより20万円多く稼いでも扶養から外れなくなったということですね。
事業や投資など、給与以外の収入については、給与所得控除が受けられないため、58万円が壁となります。
所得税がかからない基準は「160万円」に
もう一つ覚えておきたいのが、本人に所得税がかからない基準も変わったという点です。
所得税上の扶養は「123万円の壁」がポイントで、パートやアルバイトで働く人の所得税がかからない非課税の上限としては、「160万円の壁」がポイントとなります。
年収160万円までなら本人に所得税はかかりませんが、扶養に入れるかどうかは別の話なので注意しましょう。
また住民税がかからない上限収入はもっと低く、110万円(自治体による)を超えると住民税が発生します。
大学生世代の子どもがいる家庭に朗報
大学生の年代の子ども(19歳以上23歳未満)がいる世帯の税負担を軽減するため、「特定親族特別控除」が創設されました。
2024年までは、この年代の子どもがアルバイト等で収入を得た場合、「103万円の壁」を超えてしまうと、扶養控除が受けられなくなっていました。
2025年からは、「103万円の壁」が「123万円の壁」になったことに加えて、123万円を超えた場合でも、金額に応じて段階的に控除が受けられるようになりました。
扶養控除申告書の書き方の要点
「所得」と「収入」の違い、正しく理解していますか?
年末調整で最も勘違いが多いのが、「所得」と「収入」の違いです。この違いを理解していないと、扶養控除の判定を間違えてしまう可能性があります。
扶養控除等(異動)申告書に記載するのは「所得」です。
「収入」とは何か
収入とは、会社から受け取った給与や賞与の合計額のことです。いわゆる「額面」や「年収」と言われる金額のことです。
例えば、給与明細に「総支給額30万円」と書かれていたら、それが収入です。1年間の給与明細の総支給額を全て足したものが「年収」となります。
非課税の通勤手当や、立替えた経費の清算などについては、収入に含まれません。
「所得」とは何か
所得は、年間の収入から必要経費を引いて計算します。
給与所得控除とは、会社員やパート・アルバイトなどの給与所得者が受けられる控除のことです。会社員は個人事業主のように必要経費を正確に算出することが難しいため、一律の基準で控除額を算出するようになっています。
つまり、収入をもとに必要経費に相当する金額を自動的に算出し、それを差し引いたものが「所得」なのです。
「123万円の壁」で言われる「123万円」は、給与収入のことです。
扶養に入れる基準は「所得」が58万円以下です。
給与収入が123万円以下であれば、給与所得控除を引くと所得が58万円以下になるということです。
給与所得控除の計算表
給与所得控除の計算式は以下の通りです。
給与収入の額 | 給与所得控除額 |
---|---|
年収190万円以下 | 65万円 |
年収190万円超360万円以下 | 収入×30%+8万円 |
年収360万円超660万円以下 | 収入×20%+44万円 |
年収660万円超850万円以下 | 収入×10%+110万円 |
年収850万円超 | 195万円(上限) |
所得の計算例
年収が500万円の場合を例にすると、給与所得控除額は144万円(500万円×20%+44万円)となり、給与所得は356万円(500万円-144万円)となります。
このように、収入と所得では大きく金額が異なります。扶養控除の判定では「所得」の金額で判断するため、間違えないようにしましょう。
2025年の年末調整で特に注意すべきポイント
扶養親族の収入確認を必ず行う
最も注意すべきは、扶養親族の収入確認です。年末までにご家族の年収が123万円を超えないか確認しておきましょう。
特に、「103万円を超えないように働いていた」配偶者や子どもは、今年は123万円まで働いても扶養に入れることを知らない可能性があります。家族間でしっかりコミュニケーションを取ることが大切ですね。
19歳から22歳の子どもがいる場合はさらに注意
19歳から22歳のお子さんがアルバイトをしている場合、特定親族特別控除の対象になる可能性があります。
お子さんの年収が123万円を超えた場合でも、段階的に控除が受けられるため、詳細を確認しておきましょう。これまでは103万円を超えると控除が全くなくなっていましたが、今年からは段階的な仕組みになっていて、188万円までであれば控除が受けられます。
「収入額」ではなく「所得額」を記入する
年末調整の書類には、扶養親族の氏名、続柄、生年月日、そして重要なのが「所得の見積額」です。
多くの方が収入の金額を書いてしまいますが、記入するのは「収入」ではなく「所得」であることに注意してください。
例えば、配偶者の年収が123万円の場合、記入すべき所得の見積額は58万円です。計算方法がわからない場合は、この記事の冒頭に計算ツールを置いていますのでご利用ください。
扶養控除等申告書に記載する所得の範囲に注意
扶養控除等申告書には、「123万円の壁」に収まっている扶養家族を書くと勘違いしている方が多いです。
しかし、配偶者と、19歳~22歳の子どもについては、基準となる金額が異なりますので注意が必要です。
所得額上限 | 給与収入の上限 | |
---|---|---|
配偶者 | 95万円 | 160万円 |
19歳~22歳の子ども | 100万円 | 165万円 |
その他の扶養親族 | 58万円 | 123万円 |
この表にある配偶者と19歳~22歳の子どもの所得の上限額は、源泉控除する際の計算に使われるかどうかの判定基準であって、控除を受けられる上限ではありません。この上限額を超えても、配偶者は所得133万円まで、19歳~22歳の子どもは所得123万円まで控除がありますので、別途特別控除申告書に記入する必要があります。
スムーズな年末調整のための準備リスト
年末調整をスムーズに進めるために、以下の準備をしておきましょう。
- 扶養親族全員の今年の年収見込みを確認する
- 生命保険料控除証明書などの必要書類を集める
- 前年の源泉徴収票を手元に用意する
- わからないことは会社の担当者に早めに質問しておく
まとめ
2025年の年末調整では、「103万円の壁」が「123万円の壁」に変更されたことが最大のポイントです。
この変更により、配偶者や子どもがこれまでより20万円多く働いても扶養控除を受けられるようになりました。ただし、扶養控除の判定は「収入」ではなく「所得」で行われるため、給与所得控除を差し引いた金額で判断するため、所得を記入しなければならないという点を忘れないでください。
年末調整の書類記入で不安なことがあれば、一人で悩まず、会社の担当者に相談することをお勧めします。正確な申告で、適切な控除を受けて、賢く税金を節約していきましょうね。
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