年末調整の電子化を試すことにした経緯
わたしにとって年末調整は、特別大きな業務のひとつです。
わたしが勤める従業員80名程度の会社では、年末調整に関係する業務は、ほぼ全てをわたし一人で行います。
今年の変更内容を調べるところから始まり、書類の準備、回収、確認、入力などなど、やらなくてはならないことがいっぱいあります。かといって例月の業務が減るわけではないので、どうしたって忙しくなる。残業も増える。
大変ではあるのですが、わたしは年末調整が嫌いではないです。なんだか燃えるんですよね。1年の締めくくりとして、よい風物詩のように感じています。
だからと言ってそのままでいい、ということにはなりません。一時的に仕事の負荷が増えるというのは良いことではないです。特にこういう自分しかできない業務は、できるだけ軽くしておかないと、万が一インフルエンザにでもなったらどうにもならなくなる。
そんなこんなで、「年末調整の電子化」に手を付けようと考えました。いつかは対応しなければと思いつつ、日々の業務に追われて先延ばしになっていたのですが、ついに「いつか」がやってきたわけです。
さて、「年末調整の電子化」に取り組むと決めて、まず最初にやることは、「どのシステムを使って電子化するか」を決めることです。個人的には、ここが一番の悩みどころだと考えています。もし、間違った判断をしてしまうと、後々までしんどい思いをすることになるだろうと思っているからです。
会社には高齢の社員も多く、スマホやPCでの作業が苦手な方も多いです。使ってみていまいちだったから、来年からは別のシステムで、というようなことは簡単にはできません。
わたしの会社が使っている給与計算ソフトは、「PCA給与」なので、「PCAHub年末調整」が候補の筆頭です。
次いで、無料で使えるという国税庁が提供している「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(以下、年調ソフトと言う)」。
社員の方の入力のしやすさを重視すれば、ほかの選択肢もありそうです。
まずは第一歩として、「PCAHub年末調整」と「年調ソフト」の両方を試して、比較してみることにしました。
わたしの判断基準
システムを比較する前に、自分の中で何を優先して評価するかを整理しておくことにしました。評価軸を決めずに「なんとなく良さそう」で選んでしまうと、後から判断がぶれてしまいそうだったからです。優先度が高い順に、3つの評価軸を設定しました。
①入力のしやすさ
次に重視したいのは、担当者であるわたし自身の使いやすさではなく、年に一度しか年末調整の書類に触れない、制度についての習熟していない社員にとっての使いやすさです。スマホやPCでの作業に慣れていない社員も少なくないので、ここは特に重要なポイントだと考えています。総務が楽をするためにほかの人の負担を増やすのは間違っていると、わたしは考えています。それに、結局、入力作業が難しいと、質問や入力ミスが増えたりして、担当者の負担も大きくなると思うので。
②担当者側でのミスが起きにくいかどうか
ミスの起きにくさはとても重要な点です。人が行う作業にミスはつきものですが、システム的にそれが起きやすい物は避けるべきだと考えています。年末調整のミスは、誰にも気づかれないまま過ぎてしまう可能性もあり、修正の機会がないまま終わってしまう可能性もあります。正確さは何より重要で、もし間違いが増えるようであれば、電子化自体を中止するべきだと考えています。仕組み作りでなんとかなる部分もあるでしょうが、やはり手順が複雑になってしまうものには懸念が残ります。「PCAHub年末調整」が最有力だと考えているのは、この点が要因です。
③価格
やはり価格は重要な判断材料です。利益を直接生まない管理部門としては、減らせる費用はなるべく減らしたいというのが本音です。コスパは正義だと思っています。でも当然ながら、安ければ何でもいいというわけでもありません。年末調整システムはそれほど高額にはならないので、良いと思ったものを推していきたいと考えています。しかし、経営層の判断はわたしよりシビアになると思うので、無視はできないポイントです。
社員側の操作を比較する― 入力と導入について
判断基準の①でも触れたとおり、わたしが一番気にしているのは、社員側の入力のしやすさです。これを確かめるには、とにかく触ってみるしかない。ということで、「PCAHub年末調整」と「年調ソフト」の両方を実際に使ってみました。
まずは「年調ソフト」の使用感から。なんだかおしゃれなロゴが出てきます。

行政の作ったアプリということで、すっごくダサいのを想像していたのですが、思った以上にスタイリッシュで洗練された印象です。
実際の入力画面も、紙の用紙と同じフォーマットに対して入力していくようなものを想像していたのですが、全然違いました。まずは、アンケートに答える形。これによって、必要な入力項目を判断してくれます。思ったより親切です。
入力画面も質問に答えながら入力していくような箇所が多く、国が提供する無料アプリとは思えない仕上がりです。生命保険の控除を入力する際には、保険会社をリストから選べるようにもなっていて、使い勝手に配慮が見られます。

国の本気が伺えます。これが無料で使えるならいいじゃん、と思えるものでした。
ちなみにこのスクリーンショットはPCアプリ版です。最初はスマホアプリで試したのですが、スクリーンショットを撮ると真っ黒になってしまったので、PCでやり直しました。
続いて「PCAHub年末調整」です。
こちらの入力も、基本的に質問に答えていくような形で、「年調ソフト」と結構似ています。国税庁のアプリが思ったより良かったので、有料サービスでもこんなもんか、って印象になってしまいましたが、別にマイナス点があるわけではありません。
説明は丁寧です。入力のしやすさについては大きな差がないのですが、補足説明については雲泥の差がありました。わたしは年末調整担当者なので、ほぼ詰まることなくサクサク入力していけたのでありがたみも少なかったのですが、「これどういうこと?」と詰まった時には役立ちます。特に「?」マークをタップすることで、詳しい解説が出てくるのは便利でした。「年調ソフト」でもそういう機能はありましたが、丁寧さ、わかりやすさが段違いです。


時には画像付きで解説してくれるので、かなりわかりやすいです。入力のしやすさという点で、PCAに軍配が上がりました。
もう一点、PCAには重要なメリットがあります。それは、「PCAHub年末調整」だと、入力までの準備がかなり少ない、という点です。「年調ソフト」は、まずアプリをインストールして、IDやパスワードを設定するところから始まります。一方PCAの場合は、ブラウザで操作するタイプなのでインストールが不要ですし、当社がすでにPCAを使って給与明細を電子化しているため、PCA Hubのアカウントはみんなが持っていて、届いたメールからアクセスするだけで、すぐに入力を始められます。
この差はかなり大きいです。インストールタイプの「年調ソフト」は、スマホの機種変更の際のデータ移行も面倒くさそうです。これはもう、すでに勝負あった感じです。
とはいえ、「年調ソフト」にも良い点はあります。それはマイナポータルとの連携です。生命保険料控除証明書や住宅ローンの残高証明書などを、マイナポータル経由で自動取得できれば、手元の書類を見ながら手入力するという作業が無くなり、間違いもなくなります。理屈としては非常に魅力的で、うまく機能すればかなり負担を減らせる可能性がある仕組みだと思います。
しかし、このマイナポータル連携が一筋縄ではいきません。各生命保険会社ごとに設定をしなければなりませんし、その設定方法は各社異なります。その途中で何度も認証を求められ、ブラウザとアプリを行ったり来たり。難易度はかなり高めです。
連携に対応していない保険会社(損保系など)もあります。対応している会社であっても、マイナポータルとの連携手続きの流れが会社ごとに違っているので、わたしがサポートするのも難しいところです。そもそもマイナンバーカードを持っていない人には使えない方法でもあります。「年調ソフト」を押すほどの根拠にはならない感じです。
やはり、「PCAHub年末調整」が良いと感じました。
担当者側の操作を比較する ― 確認・取り込みの流れ
続いて、社員が入力したデータを受け取り、給与システムに取り込むまでの、担当者側の操作を比較します。
年調ソフトにできることは年調用のデータを作るところまでで、そのデータを送る機能はありません。そのため、「年調ソフト」から書き出したファイルを、メールやUSBメモリなどを使って受け渡す必要があります。
社員が「年調ソフト」で作成したファイルをメールに添付して担当者に送り、担当者側でそれを一件ずつ確認し、給与システムに読み込ませていく、という流れです。正直言って、ミスする未来しか想像できません。
単純な見落としや、添付ファイルの選び間違いといった操作ミスによる漏れが起きそうです。人数が増えるほど、メールの受信ボックスの中で誰が提出済みで、誰が未提出かを管理するだけでも苦労しそうです。さらに内容に不備があった場合、修正前のファイルと修正後のファイルを取り違えてしまうリスクも十分にありそうだと感じました。かなり怖いです。
10人程度の少人数であれば、この一件ずつのやり取りもさほど負担にならないかもしれません。ただ、当社のように80名規模になると、この「メールで受け取って個別に読み込ませる」というやり方は、かなり煩雑になりそうだと感じました。
一方で、有料サービスである「PCAHub年末調整」は、この点は明確に優れています。
提出や差し戻しの状況が確認できる一覧がありますし、不備の連絡などもアプリ上で行えるのでスムーズです。データはPCA Hub上で管理するので、取り違えも起こりません。PCA給与との連携が前提のサービスなので、控除申告書のデータを作成してから給与DXへ取り込むまでの流れも楽ちんでした。
提出されたデータの確認もしやすくなっていて、会社が持っているデータと、本人が入力してきたデータを比較できるようになっているので、チェックがかなりしやすそうです。
やはり、PCA優位はこの点でも変わらない印象です。
総合評価 ― 価格も含めて
最後に、判断基準③で挙げた価格も含めて、総合的に評価してみます。
ここまで、PCAが良い、良いと言ってきましたが、そりゃ有料なんだから無料に負けていたら話にならないわけです。問題は、かかった費用分の価値があるかどうか。
国税庁の「年調ソフト」は無料で使える点は間違いなく魅力です。無料でこれだけ使えるならいいじゃん、と思える出来でした。コストをかけずに電子化の第一歩を踏み出せるというのは、企業には大きなメリットです。
一方の「PCAHub年末調整」は有料サービスで、1人当たり年額で528円(税込・2026年時点)がかかります。おそらく10名単位での契約になると思われるので、80人なら42,240円となります。安いと言えるかどうかは微妙ですが、ものすごく高いということはありません。
ここまで見てきた社員側・担当者側それぞれの操作性を踏まえると、総合評価としては「国税庁の年調ソフトはもう一歩」というのが正直な感想です。社員数が10人以下くらいであれば、メールでのやり取りやファイルの管理もそれほど煩雑にならないと思うので、悪くない選択だと思います。しかし人数が多くなると管理が難しくなりそうです。再提出があった場合には、最新のデータと古いデータを取り違えてしまうことも起こりそうで、不安が残ります。
80人くらいであれば、国税庁の年調ソフトでも、ギリギリ何とかなりそうな気もします。管理用のエクセルシートの作成や、ファイルの管理方法を決めることで、ある程度はカバーできそうな気がしています。
一方で、「PCAHub年末調整」の最大のデメリットは費用が掛かる、という点です。42,240円は、システム導入によって「わたし自身の残業代が減りそう」という点だけで考えると、費用分の元を取れるくらい減らせるかかどうかは微妙です。しかし、「一時的な業務負荷の増大」を解消し、体調不良などのリスクに備えるという効果も加えると、やる価値はあるのではないかと思います。
PCAもそこまで高額なサービスではないことを考えると、わたしの判断としては「PCAHub年末調整を契約する」という方向で会社に説明したいと思いました。
その前に、ほかの年末調整電子化システムにもっと良いものがないかを調べないといけませんね。
さて、PCAとなるか、無料の年調ソフトで行けとなるか、第三のシステムとなるか、電子化自体が先送りになるか。
さて、どうなることやら。
実際になんらかの年調システムを導入することになった場合は、その運用結果もまたこのブログに記録していきたいと思います。
※本記事に記載した制度・アプリの仕様は執筆時点の情報であり、年末調整に関する制度や各アプリの仕様は変更される可能性があります。実際の対応にあたっては、国税庁や各システムの最新情報をご確認ください。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。
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